コラム/2014-10-12
子は親を一旦捨てる~執着から愛へ
「うちの娘は夜遊びばかりして家に帰って来ない事もあります。
どうすればいいのでしょうか?」
「うちの息子は素直で大人しかったのに、最近では私を避ける様になり
反抗的になって・・・」
僕は子供が親から自立してゆく為には一旦親を捨てる必要があると思います。
勿論、親を山に捨てる訳ではありません(笑)。
「お母さんが私の事を一番わかってくれる」
「お母さんだけには甘えられる」
「お母さんは世界一私を愛してくれている」
・・・子供にとって親は「唯一の存在」であり、当然最も深い愛着の対象です。
同様に、親にとっても子供は「唯一絶対」の愛着の対象でしょう。
そして、この「愛着」によって子供は親から無条件の愛をもらい、
「私は愛される存在だ」「私は安全だ」「私は”ここ”に居ていいんだ」
等という存在価値や自己肯定感が養われ、同時に他者(=親)の保護や愛情、
養育的態度を受けて「他者は自分を受け入れてくれる」といった、
他者に対する信頼も生まれていきます。
そして、親以外の他者と関わってゆく”勇気”や好奇心が育ち、
他者との関係性の中でアイデンティティーも育ってゆくでしょう。
やがて子の”自立”の時期が来た時にはその「愛着」は、
もはや今は必要がなくなったへその緒みたいなものに変わるでしょう。
この”へその緒”を切らなければ、自分の足で立ち結婚して家庭を築いていったり
という「自分の人生を自分で歩む」為の邪魔になるでしょう。
だから子供は”へその緒”を断ち切ろうとして口を聞かなくなったり、
家に帰って来なくなったり、家を出て行く訳です。
所が、青年期になってもどちらかの「愛着」が強すぎて
「執着」になってしまっていると自立に向けての正常な母子分離が難しくなります。
例えば夫婦仲がうまくいってない母親等が
「この子だけが頼り」と執着してしまうケースや
「お母さんに充分わかってもらえなかった」等と親に対する未練がある場合や
「(自分の事はさておいて)お母さんを私が助けなきゃ」等と”親を助ける人”
になってる場合はその執着を断ち切る事が難しくなるでしょう。
そういった時には、親の執着を断ち切るお手伝いをする場合もありますが、
子供側から親への執着を断ち切る時によく申し上げる事は、
「親を一旦捨てて下さい」という言葉です。
こんな事を申し上げると、泣き出したり、怒ったりポカンとされる人もいます。
無論、ここでの「親を捨てる」という意味は
「わかってもらえなかった」等の親への未練を手放したり
「自分を犠牲にしてまで親を助ける」等といった執着を捨てる、という事です。
ー 親を一旦捨て、自分が幸せになる事だけを考えてまず幸せになる事。
仕事で成功したり、結婚して幸せな家庭を築く・・・。
そうして自分が幸せになれば”余裕”が出来ます。
”余裕”ができた時にもう一度親に振り向いたらいいと思います。
その時には、あなたは既に幸せになっていて余裕がありますから、
もしかしたら「お母さんも若くして私を産んだから、私の気持ちをわかる余裕が
なかったんだろうな。仕方がないな」と諦められるかも知れません。
或いは、「お母さんは、私に依存してたんだなあ。
あの時、私がお母さんを助け続けていたら、お母さんはずっと私に依存しっ放しで
増々”弱い人”になっていたかも知れないし、私も潰れてたかも知れないな」
等と振り返る事ができるかも知れません。
そうして親を「対等な一人の人間として愛する」事ができる様になって
「相手から何かを得よう」とか「相手に依存しよう」という気持ちがなくなって
来るのだと思います。
その時にもし望むのであれば親の面倒を見たり、恩返しをしてゆく・・・。
その気持ちや行為ははもはや「執着」ではなく「愛」に変わっていってる
のだと思います。
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