コラム/2021-05-31
劣等感と自己愛性パーソナリティー障害②
<前回からの続き>
今回は前回取り挙げた、「自己愛性パーソナリティー障害」と思しき
架空のA男さんの心理(脳)的なメカニズムを(私見に基づき)解説して
ゆきたいと思います。
A男さんは父親に否定され、モラハラ・DVを受けて来ました。
でもそんな父親に反発し、殴り返したり非行に走る様になりました。
私の推測では
①父親の否定・モラハラ・DV
→②恐怖・怒り
→③(ノル)アドレナリンシステム起動
→④相手に勝つ優越感や非行(面白い事)で刺激を得る事を目標にする
→⑤ドーパミンシステム起動
→⑥優越感や喜び(報酬)を得る
といったパターンが繰り返されそれが強化されていったのでは?
と想像します。
この事からも、A男さんは恐らく刺激を求める「ドーパミンシステム」
+「(ノル)アドレナリンシステム)」優位型と考えられます。
そして、
もしかしたら彼の父親も同様のシステムを持っているのかも知れません。
だとすれば、
そのシステムの型は、遺伝=器質的な要因が大きいのかも知れません。
但し、同様のシステムの型を(生まれつき)有している人が
皆「自己愛性パーソナリティー障害」になる訳ではないでしょう。
例えば同様のシステムを持って生まれたC男さんが居たとして、
彼の父親が所謂”スポ根親父”だったとします。
C男さんは幼い頃から父親に野球をさせられて、
厳しい指導を受けてきました。
時に鉄拳制裁も喰らいましたが、上達したり試合で活躍すれば
父親は大いに褒めたり喜んでくれました。
そして、C男さんは大声援の元で甲子園に出場し試合に勝って
歓喜の涙を流しました。
この場合のC男さんのシステムのメカニズムとして考えられるのは
①父親から否定
→②恐怖・怒り
→③(ノル)アドレナリンシステム起動
→④「何クソ!」と練習に打ち込む
→⑤上達を褒められたり、自分で実感できる
→⑥ドーパミンシステム起動
→⑦達成感や喜び(報酬)を得る、
というパターンが考えられます。
もしそうだとすれば、
「自己愛性パーソナリティー障害」と思しきA男さんと、
甲子園のスターのC男さんの一体どこが違うのでしょうか?
もし上に書いた私の想像が正しければ、
C男さんの場合は「④」「⑤」の様に、
「否定」や「劣等感」で(ノル)アドレナリンシステムが起動されると
その怒りや悔しさを「何クソ!」と自分が努力する事にぶつけ、
自分で満足する、他者から承認される事を目指して
ドーパミンシステムが働いていると考えられます。
※そのパターンができ上げれば、野球のイチロー選手や
フィギュアスケートの羽生選手の様に、
「自分はまだまだダメだ」(自己否定=(ノル)アドレナリンシステム)
→「もっと練習してうまくなりたい」(自己満足=ドーパミンシステム)
を内在化させ、素晴らしい選手になってゆくでしょう。
そしてそこには他者からの否定は必要ないので(内在化してるので)、
他者の否定には敏感ではなくなっているのかも知れません。
一方A男さんの場合は、
最終的な報酬(相手に勝つ優越感等)を得る為には、
まず他者の否定に対して敏感になって(ノル)アドレナリンシステムを
起動させる必要があるのだと思います。
ですから、相手の否定に敏感になり「お前は俺を否定してる!」
と捉えなきゃ始まらない訳です。
そして、
相手を完膚無き迄に叩きのめす事でしか報酬を得られないパターン
ができてしまっているのではないでしょうか?
もし私のこれらの想像が当たっているとすれば、
「自己愛性パーソナリティー障害」の人は「劣等感が根底にある」
というよりも、
「劣等感」を作り出してでも報酬を得るパターンを身に着けてしまっている
とも言えるかも知れません。
更に、
A男さんはC男さんと比較して「自分を客観視できない」という部分がある
と思われますが、これは自我の未発達の部分とも言えるでしょう。
そうであるならば、私は上記の様なパターンが繰り返された為に、
報酬系のシステムがそれに基づく様に強化・固定された結果として
自我の発達を妨げたのではないか?とも考えます。
次回からは、「境界性パーソナリティー障害(BPD)」の人の
私なりに考えるそのメカニズムをお書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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