コラム/2021-06-11
境界性パーソナリティー障害は何故薬物療法が難しいのか?
<前回からの続き>
お医者さんで「境界性パーソナリティー障害」とみなされた場合は、
及び腰になられるドクターもいらっしゃると思います。
(勿論、カウンセラーや心理士の方々もですが)
それは精神科や心療内科は主に薬で治療する場所ですが、
「境界性パーソナリティー障害」は薬物療法が大変難しいからだと思われます。
以下に、私なりに想像したその理由をお書きしたいと思います。
<境界性パーソナリティー障害には薬物療法が難しい理由>
①境界性パーソナリティー障害(以下「BPD」と表記します)の人は
「O」(オキシトシンシステム)が脆弱であると考えますが、
それを補填する薬剤が無い。
(オキシトシン点鼻薬などもありますが、一時的な効果に過ぎない)
②BPDの人は、元来刺激を求める傾向が強く
(「N」システムと「D」システムが優位)、
しかもその傾向が強化されてきたと考えられます。
だとすれば、
それらのシステムを抑える方向性の「抗うつ薬」
(「S」を活性化=「N」「D」を抑制したり、
「S」と{N」のみ活性化し、「D」を抑制)
や
「抗不安薬」(抑制系のGABAの活性化を高め、
結果として「N」や「D」が抑制される)
や
「抗精神病薬」(「D」システムを抑制する)
は、
刺激(「N」や「D」システム)を抑える方向で作用します。
そうなれば、
薬が効きすぎると「空虚感」(刺激を得られない状態)に襲われて
何もする意欲が湧かなくなったり、
逆にその現状を打破する為に、自傷やこきおろし、脅し等の
いつもの刺激を得るパターンをより求めてしまうかも知れません。
かと言って、
「N」や「D」システムを活性化するメチルフェニデート系の薬剤
(コンサータやリタリン等)を投与しても、
それが呼び水となってより「いつものパターンでの刺激の満たし方」が
強くなる事も考えられます。
③その人の各システムの割合に合致させる事が難しい
「S」「N」「D」の各システムの最適な配分は
BPDに悩んでいる個々人毎に違うと思います。
(Aさんは「2:4:4」が最適で、Bさんは「1:4:5」が最適等)
しかも同じ個人の中でも最適な割合は
年齢や経験、出来事、ライフイベント等で時々刻々と変化してゆく
と想像しますので、
薬剤ではそこまで微妙な変化に合わせる事は大変難しいと思いますし、
第一、薬同士が拮抗してしまうと思います。
更に一日の中でも「D」システム優位な時間、(例:自由な時間)
「N」システムを活性化しないといけない時間(例:仕事中)、
「S」システムを活性化しないといけない時間(例:休日)等の
個人の生活リズムに合わせる事は薬ではほぼ不可能だと思われます。
④薬剤では「N」「D」システムの固定化されたパターンを
変える事ができない
例えば、
元々刺激を求める傾向(「N」「D」システム)が強く
ギャンブルでそれを満たそうとするパターンが固定化された、
所謂「ギャンブル依存症」の人に、
薬で「N」「D」システムを抑制すればギャンブル依存症が治るのか?
と考えてみればおわかり頂けると思いますが、
システムの固定化されたパターンを薬剤で変えるのは非常に難しい事
だと思います。
(仮に薬が効いたとしても、薬を服用する方向へシステムのパターンが固定
されてしまうと、薬に頼ってしまう事になる可能性もあると思います)
次回は、
それではどうすれば「BPD」を改善できるのか?
のヒントをお書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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