妄想性パーソナリティ障害の原因
妄想性パーソナリティ障害の原因
<前回からの続き>
前回の(架空の)例
「職場の後輩のAは、俺によく”リーダー、いつも遅くまでご苦労様です!”
と声を掛けてから先に帰ってゆく・・・。
この前、課長からも”君はいつも遅くまで頑張っているらしいな。
無理するなよ”と言われた・・・。
きっとAの奴は俺が仕事を時間内に終えられない能無しだと課長にチクって
課長と共謀して、俺をリーダーから引きずりおろそうとしているんだ。
あいつら、許せない!Aと課長の自宅はわかっているから、
火をつけてやろうか・・・」
上の例でこの人は、
・相手から馬鹿にされる事(=不快)
・自分の知らない所で悪意のある密談が行われる事(=不快)
・リーダーの座を奪われる事(=不快)
といった、不快刺激に対する敏感さを有していると考えられます。
だから、必要以上に不快刺激を避けようと警戒し続ける訳です。
更に、
後輩や課長の言い方や表情、態度等の五感からのインプット(=刺激)の
ほんのちょっとした違和感や他の人に接する時との僅かな差異を感じ取って
「俺を陥れようとしているに違いない」といった結論を出した
のかも知れません。
そして、
「許せない!・・・火をつけてやろうか?!」という部分は、
MAXに達した不快刺激から身を守る為の防衛反応だと考えられます。
以上の事から、
「妄想性パーソナリティ障害の原因」として
私は以下の原因を推測しています。
<私が考える妄想性パーソナリティ障害の原因>
①刺激に対する敏感さを有している
遺伝的なもの、或いは父母や養育者等のマルトリートメント(不適切な養育)、
幼い頃のトラウマとなる出来事等によって、
先天的、または後天的に敏感である。
②侮辱、軽蔑、脅し、搾取、危害を加えられた、騙された、裏切られた体験
によるトラウマがある
その出来事がトラウマになるか否か?は
恐らくその人の敏感さの度合いによると思います。
つまり同じ出来事でも、敏感さが強ければ強い程、トラウマになり易く、
それ程敏感ではない人はトラウマになりにくいと考えます。
③愛着の問題によって、耐性が無い為にトラウマが残り続ける
そうしてできたトラウマが残り続けるか否か?は
耐性の問題が絡んで来ると考えています。
つまり、譬え敏感さが強くてトラウマができ易い人であっても、
愛着形成がなされていて耐性の窓が育っていれば、
トラウマによる反応が長期間持続する事は避けられると思います。
※私は愛着形成が成されなかったのは一概に親(養育者)だけの責任
であるとは考えません。
即ち、子が極端に敏感であれば、愛着形成がより難しくなる
と考えるからです
④防衛反応が恒常的に持続し続け、皮質側(意識)が機能停止している
上の例の場合は、”相手からの攻撃”といった危機的な状況に備え続け、
”戦う”、”敵をやっつける”といった防衛反応が作動し続けている
と言えるでしょう。
これは耐性の窓が広がらず、辺縁系側の無意識の防衛反応が
常に働き続け(過覚醒)、意識(皮質側)が抑え込まれてしまっている為、
正常な判断ができない状態と言えるでしょう。
それはまるで戦場にいて、”いつ敵に撃たれるかわからない”
といった状況下では、皮質側の冷静な判断が無効になってしまう
のと似てると思います。
もしそうだとすれば、
妄想性パーソナリティ障害の寛解を目指すには
どういった治療(カウンセリング)が必要なのでしょうか?
そのヒントを次回お書きしたいと思います。
<次回へ続く>