症状/障害には元々ポジティブな意図がある

症状/障害には元々ポジティブな意図がある

私は臨床家として12年以上、

「うつ」「不安」

「パニック」「強迫」

摂食障害依存症

「トラウマ」PTSD

「パーソナリティ障害」「統合失調症」

「双極性障害」「発達障害」

と診断された方等、

所謂「精神疾患」とされるあらゆる症状や障害で苦しんでおられる方に
カウンセリングを差し上げて参りました。



そんな中で、常に意識しております事は

「この人は何故この症状を持つに至ったのだろうか?」

「その本当の原因は何なのだろうか?」

と、

頭の中では”根本原因”を追い求めているという事です。



そういう観点からご質問をしてゆき、自分なりに”謎”を解いてゆくと、

「クライアントさんがお悩みになっておられるほぼすべての”症状”は
 元々はポジティブな役割があったのでは?」

と感じずにはいられません。



症状やお悩みは

「治したい(=意識)けど、治らない(無意識)

「消したい(意識)けど、消せない(無意識)

等といった、

意識では制御不能になっている無意識の働きによるものが殆どです。



そして、

この”無意識”は本来、ポジティブな働きしかしない筈です。



何故なら、人間を含む全ての生物は

「個や種として生き延びる⇒そして遺伝子のコピーを残し続ける」
(特に人間の場合は独りでは遺伝子のコピーを残せませんし、
 社会的な動物ですから他者との交流も必要不可欠です)

といった目的を持っていると考えられますので、

無意識は
「生き延びる事」「遺伝子のコピーを残し続ける事」
「社会的な交流を求める事」

といったポジティブな目的の為にのみ働いている筈です。






次回からは、

最近はやりの「ポリヴェーガル理論」を用いて、
もう少し詳しくご説明差し上げたいと思います。

 

 

無意識のポジティブな意図
~ポリヴェーガル理論を基に

 

「ポリヴェーガル理論」

アメリカの神経生理学者であるステファン・W・ポージェス博士
が発表した理論です。



この理論で博士は、

身体の反応は3つの主要な自律神経系の機能によって調整されている
と述べておられます。

それらは、ごく簡単に申しますと、

①交感神経系

 ストレスや脅威が高まると、警戒状態に入り
 「戦うか逃げるか」の反応を制御(防衛機能)



②背側迷走神経系

 個体が戦う/逃げる事が不可能な程の大きな脅威に晒された時、
 極端なストレス状態や危険から身を守るための最後の手段として
 凍り付き、擬死、解離等の反応を制御(防衛機能)



③腹側迷走神経

 人間関係やコミュニケーションを円滑にし安心/安全をもたらし、
 生存の可能性を高める為の社会的な反応と感情を制御(社会的関わり
 の機能)

である、という事です。



その中で、

精神的な”症状””障害”と言われるものは、
「①」と「②」の神経系の働きによると思われます。



例えば、

「①」交感神経系の働き(防衛機能)によって生じると考えられる症状

不眠症、不安障害、パニック、強迫性障害、依存症、摂食障害、
ADHD、PTSD、パーソナリティ障害等の
過覚醒状態から生じるもの



「②」背側迷走神経系の働き(防衛機能)によって生じると考えられる症状

うつ/抑うつ状態、ナルコレプシー(過眠症)、解離性障害、引きこもり等の
低覚醒状態から生じるもの

※統合失調症の陽性症状/陰性症状や双極性障害等は「①」の過覚醒と
 「②」の低覚醒の両端に振れてしまう状態と考えられます



だとすれば、

全ての精神的な症状や障害は危機的な状況下で、
「自律神経系を総動員して、個人が生き延びる為に生じている」
とも言えるでしょう。



それ故私は

「うつをやっつける!」とか「不安を消し去りたい」等と
症状や障害を敵視するのではなく、

「あ~、”うつさん”が私を守ってくれてるんだな・・・有難う」
等と、
まず肯定してあげる事が先決だと思います。



ただ、もしそうであったとしても、

何故本来はポジティブな役割を果たすはずの無意識や自律神経系の働き
によって悩み苦しむ事になってしまうのでしょうか?

次回からは、
その”原因”を推察してみたいと思います。

 

 

 

何故症状/障害で苦しむのか?
~ポリヴェーガル理論を基に

 

前回は、

「ポリヴェーガル理論」を基に、

「症状や障害は
 個体が生き延びる為の自律神経系や無意識の防衛機能であり、
 元々はポジティブな意図を持っていた」

とお書きしました。



それでは、

何故それが”症状”や”障害”となって、
個体が苦しむ方向へ向かってしまうのでしょうか?

「ポリヴェーガル理論」を基に考察しますと、

”症状”や”障害”と言われるものは、

「③」の「腹側迷走神経系」が、

防衛反応である「①」の「交感神経系」(過覚醒)
「②」の「背側迷走神経系」(低覚醒)を制御できなくなった状態

とも言えるでしょう。

(逆に、「③」による制御が有効な範囲を”耐性領域”、”耐性の窓”
 と言います)



だとすれば

何故「③」による制御ができなくなったのでしょうか?



私は、

A.耐性領域の狭さ

B.トラウマによるもの

といった主に2つの原因があるのでは?
と考えております。



つまり、

「A」の耐性領域が狭ければ、

交感神経系の働きによる過覚醒状態

背側迷走神経系の働きによる低覚醒状態に陥り易く

容易に腹側迷走神経系による制御が不可能な状態に陥るでしょう。



そうなれば

防衛機能が暴走して、症状や障害となってしまうと考えられます。



また、

「B」のトラウマによるものの場合は、

耐性領域が狭い/広いに関わらず、何らかの引き金(トリガー)が引かれると、
一瞬で「③」による制御不可の状態に陥るでしょう(フラッシュバック等)



それでは、

何故耐性領域が狭くなってしまったのでしょうか?

次回は考えられるその原因をお書きしたいと思います。

(「B」トラウマによるものに関しては、別の章に譲りたいと思います)

 

 

 

何故耐性領域が狭くなり、症状/障害で苦しむのか?

 

前回、

(「ポリヴェーガル理論」を基に考察すると)
 ”症状”や”障害”と言われるものは、

 ”腹側迷走神経系”が、
 防衛機能を司る”交感神経系”(過覚醒)や”背側迷走神経系”(低覚醒)
 を制御できなくなった状態だと考えられる。」



そして、

「腹側迷走神経系が制御不能になってしまう原因の一つは、
 耐性領域の狭さであると考えられる」

(耐性領域が狭いから、容易に過覚醒や低覚醒の状態=症状や障害が出現
してしまう)
 
とお書きしました。






もしそうであるなら、

「耐性領域」は何故狭くなってしまうのでしょうか?



今回は、

考えられるその原因をお書きしたいと思います。






<耐性領域が狭くなる原因>






①愛着(アタッチメント)の問題



耐性領域を広げる為には、

まず幼児期の親との間での自律神経系の「相互調整」を経て
「自己調整」できる能力が育まれる必要があると考えられます。



ところが、

幼児期の養育者との関係においてネグレクトや虐待等によって、
安定型の愛着が形成されなかった場合は、

「相互調整」が行われず、当然自己調整する能力も育まれず、
耐性領域が狭いままになってしまうでしょう。

(恐らく親の過保護・過干渉等によっても自己調整能力は妨げられ、
耐性領域は広がらないと考えられます)






②感覚過敏(過度の敏感さ)

感覚過敏(過度の敏感さ)を有している子供は
元々耐性領域も狭い場合が多いと考えられますし、

例えば

「抱っこやハグされるのが不快」(触覚過敏)、
とか

「わいわいがやがやしている家族と一緒に居るのが不快」(聴覚過敏)
とか

親の冗談に傷つく
とか

母親の辛そうな表情を見て甘える事を断念する
とか

兄妹が怒られる場面を見聞きして親を安全基地とは感じられなくなる
とか

親や先生のちょっとした注意や誤解、友人のからかい等にも過敏に反応し、
傷ついてしまう

等の、

安定型の愛着が極めて形成し辛い、
即ち自津神経系の調整が極めて難しい状態になる事も多いと想像されます。



それ故、

耐性領域が広がらないケースも多くなるのでは?
と考えられます。

(この感覚過敏については、上記の様な先天的なものもあるでしょうが、
 被虐待的な環境に育ったが為に後天的に生じる場合もあると思います。
 但しいずれにしても耐性領域を広げられない点では同じだと思います)






それでは、

どうすれば耐性領域を広げる、即ち自律神経系の調整能力を高め、
症状や障害にまで発展しない様にできるのでしょうか?



次回からはそのヒントをお伝えしたいと思います。

 

 

症状/障害を制御する能力の高め方①

 

今回からは、

耐性領域を広げる

即ち自律神経系の調整能力を高め(ポリヴェーガル理論で言うところの
腹側迷走神経系の働きを強める)

症状や障害(交感神経系や背側迷走神経系による過度の防衛反応)
にまで発展させない為のヒントをお書きしてゆきたいと思います。






<症状/障害を制御する能力の高め方①>






①自己調整能力を高める

自己調整をする機能

ポリヴェーガル理論では、
脳も含めた腹側迷走神経複合体と考えられています。



例えば、

自分とよく似た個性を持っている愛しい我が子が
パニックになったり、わめき散らしていると想像してみましょう。

その時、

我が子は交感神経系が耐性領域を超えて過覚醒状態になっている
と想像されます。



もしあなたがその子の母親であるならば、

どうやって落ち着かせる(覚醒レベルを耐性領域内に戻す)でしょうか?



例;

「話を聞いてあげて落ち着かせる」

「ギュッと抱きしめてあげる」

「優しい笑顔で手を握って、落ち着くまで傍に居てあげる」

「大丈夫、大丈夫よ、と背中をさすってあげる」

「ちょっと深呼吸しようか?と一緒に深呼吸する」

等々。



逆に、

愛しい我が子が塞ぎこんで、ご飯も食べられずに布団から出られない
と想像してみましょう。

その時、

我が子は背側迷走神経系が耐性領域を超えて低覚醒状態になっている
と想像されます。



もしあなたがその子の母親であるならば、
どうやって元気づける(覚醒レベルを耐性領域内に戻す)でしょうか?



例:

「話を聞いてあげて元気づける」

「あんたの好きなプリンを一緒に食べようか?」
とか
「あんたが好きなアイドルの動画を一緒に見ようか?」

等と気分転換させる



(落ち込んでいるのなら)自信を持たせる声掛け

(自分を責めてるのであれば)”あんたは悪くないよ”
等の肯定の声掛けをする

こそばして笑わせたり、散歩に誘ったり、動くように持ってゆく

等々。



それを、

自分の中に過覚醒や低覚醒に陥った我が子が居るとして、
その子を俯瞰で見続けて言葉や動作でケアしてあげましょう。



自分(腹側迷走神経複合体)
我が子(交感神経複合体や背側迷走神経複合体)
俯瞰で見続けてケアする事を繰り返せば、

自律神経系の自己調整能力を高める事ができる筈です。






次回はこの続きである
「相互調整能力を高める」ヒントをお書きします。

 

 

 

症状/障害を制御する能力の高め方②

 

<症状/障害を制御する能力の高め方②>






②相互調整能力を高める

「相互調整」とは

本来、安定型の愛着が形成された親子に見られる様な

「泣いてる子に親が笑顔で抱っこする」

「子が笑顔になってはしゃぐ」

「それを見た親も安心する」

等といった、

自律神経系や感情の双方向の調整です。



だとすれば、

交感神経系や背側迷走神経系による過度の防衛反応が生じている人
だけではなく、

依存/共依存的な一方通行の調整しか行っていない人にも
相互調整能力を高める事は有効だと考えられます。






(1)過度の防衛反応が生じている人

(「①」の自己調整能力を高めながら)

まず、
過度の防衛反応が出ない人を選んでゆく。



そして、
その相手に思い切って不安や悩みを打ち明けて、
自分の感情を調整してもらう。

(その時の相手の感情の変化も感じる様にする)



次に、
相手の不安や悩みを聞いたり、

相手が「落ち込んでるか?、興奮し過ぎてるか?」に気が付けば、

こちらが元気づけたり落ち着かせたり、等の感情を調整してあげる。

(その時の自分の感情の変化も感じる様にする)






(2)依存/共依存的な人

依存的な人(相手に自分の感情を調整してもらう)も、

共依存的な人(相手の感情を調整しようとしてしまう)も、

感情調整から言えば、
一方通行になっていると言えるでしょう。



ですから、

依存的な人

「相手の感情を調整しようとトライする事」
が相互調整へと繋がるでしょうし、



共依存的な人

「自分の感情を相手に調整してもらおうとトライする事」
が役に立つと思います。






次回はこの続きである
「腹側迷走神経系が働く機会を増やしてゆく」ヒント
をお書きします。

 

 

 

症状/障害を制御する能力の高め方③

 

前回までにお書きした様に、

ポリヴェーガル理論を基に考察すれば、

腹側迷走神経系(社会的関わりの機能)の働きを強める事で耐性領域を広げ

症状や障害(交感神経系や背側迷走神経系による過度の防衛反応)
が生じない方向へ持ってゆける

と考えられます。



だとすれば、

この腹側迷走神経系が働く機会を増やしてゆく事
が症状/障害には有効の筈です。

今回は、

その方法のヒントをお書きしたいと思います。




<症状/障害を制御する能力の高め方③>






③腹側迷走神経系が働く機会を増やしてゆく

(1)相互調整/自己調整能力を高めて耐性領域を広げておく



※前回の「②」と前々回の「①」の方法をご参照下さい

※トラウマがある場合は、そのケアもしておきましょう

(2)防衛反応が起きにくい対象を選ぶ



いきなり「怖い」「苦手」と思う相手や対象に近づいてゆくと
防衛反応に圧倒される恐れがあります。

それ故、
比較的「安心」「安全」と感じる相手や対象から
徐々に社会的関わりを行う必要があると思います。



例:



「クラスや職場等で、相手を観察・評価してゆき、
 比較的怖さや苦手感を感じない相手を選ぶ」



「男女/老若/動物の種類等を思い浮かべて、
 比較的怖さや苦手感を感じない相手や対象を選ぶ」



(おばあさんは、まだマシ、犬より猫の方がマシ、等)

(3)その対象へのアプローチの手段を考える



例:



「クラスのA子は、感じが良い子で、私と同じ”推し”だ・・・。
 明日思い切って彼女のSNSに”いいね!”をつけてみようかな?」



「同年代の子は苦手だけど、おばあさんは苦手じゃない・・・
 今度困っているおばあさんを街で見かけたら、
 声をかけてみようかな?」



「私は犬より猫の方が好きだ・・・
 今度思い切って猫カフェに行ってみようかな?」

(4)できる範囲で少しずつそれを実行してゆく

※お独りでは難しい場合はお気軽にご連絡下さい

プロフィール

のぶさわ 正明
のぶさわ 正明心理カウンセラー・自己実現コーチ
・公認心理師
・全国WEBカウンセリング協会認定
  心理療法カウンセラー
  不登校児対応アドバイザー
・矢野惣一「心の専門家養成講座」卒業
NLP、催眠療法、ゲシュタルト療法、解決志向ブリーフセラピー、フォーカシング、認知行動療法ナラティブセラピー、インナーチャイルド癒し、トラウマ療法、家族療法(システムズアプローチ)等とその統合を習得する(TVの解決ナイナイアンサーでお馴染みの「性格リフォームの匠(達人)」心屋仁乃助さん、「アネゴ系セラピスト」大鶴和江さんは矢野講座の先輩です)
・Gakken「学研の家庭教師」不登校事業室の外部相談カウンセラー
・WEBカウンセリングルーム「みらい」カウンセラー
・日本フォーカシング協会会員
・国際ブリーフセラピー協会(旧:日本ブリーフセラピー協会)会員

2012年2月開業。2025年時点で4,000名超のお客様のご相談をさせて頂きました。