精神疾患と心理療法①原因と結果

精神疾患と心理療法①原因と結果

「夜に眠れずに、早朝に目が覚めてしまい、常に気分が沈んでいる・・・
 時々ふいに涙が出て来てきてしまうし、
 食欲も落ちて仕事に行く事もできず、趣味を楽しむ気持ちにもなれない。
 心療内科で”うつ”と診断されて薬を服用してるが、中々良くならない」

上の例で言いますと、

「眠れない」「早朝に目が覚める」

「気分が沈んでいる」「涙が出る」

「食欲が落ちる」「仕事や趣味をする気力が湧かない」

・・・これらは、表面に出ている症状
つまり何かそうなる原因があっての”結果”だと言えるでしょう。



精神科心療内科では、その”結果”を引き起こしている
直接的な(科学的に根拠があるとされている)原因に対して薬剤を処方
します。



例えば

「眠れない」(結果)←「脳の神経が興奮している」(原因)

=「抑制系の神経伝達物質GABAの流量を増やす睡眠(導入)剤を処方する」



「気分が沈んでいる」「気力が湧かない」(結果)

 ←「精神を安定させるセロトニンややる気を出すノルアドレナリンの不足」
                            (原因)    
                           
 =「セロトニンやノルアドレナリンの濃度を高める抗うつ薬を処方」

等々。

では、
「何故脳の神経が興奮しっ放しになってるのか?」
とか
「何故セロトニンやノルアドレナリンが不足してしまっているのか?」
についての原因には触れないでしょう。

それは何故なら、「科学的には原因はわからない」からです。



脳というものは構造が細かく複雑すぎて、殆どの事がわかっていません。

例えば、腹痛を訴える患者さんに対して、
内科医は問診の後に、エコーやレントゲン、МRI、内視鏡等を駆使して
腹痛の原因を突き止めようとするでしょう。



ところが、
脳に関しては、そういった科学的な検査が今の所不可能に近く
原因を特定できないのが現状です。



譬えて言うと、
100年前の医療技術では腹痛の原因を特定する事ができず
「痛み止め」を処方する事しかできないのと同様だと言えると思います。

(よく、「心療内科へ行っても話を聞いてくれない」と仰る方が
 いらっしゃいますが、それは話を聞いても科学的な処置には
 余り役に立たないからだと言えます)



ただ、”腹痛”に痛み止めが効けば良いのですが、
効かなかったり、薬が切れると痛みがぶり返す状態が何年も続く様なら
その「痛みの原因」に踏み込まざるを得ないと思います。



そして、
そういった”科学”的にはまだはっきりしていない部分に踏み込んで
仮説を立て、その奥にある原因を想像し、その原因を変える事によって
より根本的な治癒・寛解を目指すのが(少なくとも私の)心理療法
だと思っています。



それでは一体、
心理療法ではどの様に”原因”を類推し探ってゆくのでしょうか?

その辺りを次回お書きしたいと思います。

 

#私のカウンセリングについての考え方や取り組み方は、
こちらにお書きしてますので、ご参照ください

 

 

精神疾患と心理療法
②原因を探り仮説を立てる(1)

 

前回、
「精神疾患による症状や困り事に対して、
 科学的にはまだはっきりしていない部分に踏み込んで仮説を立て、
 その奥にある原因を想像し、その原因を変える事によって
 より根本的な治癒・寛解を目指すのが(少なくとも私の)
 心理療法である」

と述べました。

今回は、
(私の)心理療法における仮説の立て方、原因の探り方の一例
をお書きしたいと思います。



例えば、
「今年の春くらいから仕事中にふいに涙が出てきて、仕事のミスも増え、
上司に注意される事も増え、朝起きると体が動かなくて
会社へ行けない日も出てきた」
といった架空のA子さんの例。



恐らく、
抑うつ症状と考えられるので、セロトニンが不足していると考えられます。



→セロトニンの不足は(原因は多岐に渡りますが)この場合は、
 ストレスホルモンであるコルチゾールの増加によると仮定します。



→もしそうだとすれば、A子さんにとってのストレスは何か?を探ります。



→お話をお伺いした所、

・真面目で優秀な仕事ぶりを認められて、この春から部門の責任者になった

・「私はダメな人間だ・・・だから頑張らないと認められない」
 という自己認識がある

・それ故、他人の評価を素直に受けとめられない

・仕事で行き詰った時でも、上司や周りに頼る事ができない

・毎晩、今日の仕事のミスやダメだったところを反省している
 (責任者になってより反省の時間が増えた)

・家に帰ってからも、休日も仕事の事で頭が一杯で、
 好きだった趣味も控えて仕事の準備や勉強に時間を費やしている
 (責任者になってから、より仕事オンリーになった)

・教育熱心で厳しい母親の元で育った長女で、優秀な妹と比べられ、
 劣等感を持っている

という事がわかりました。

それでは次回は
これらの材料を基にA子さんのストレスの原因の仮説を立てみましょう。

#私のカウンセリングについての考え方や取り組み方は、
こちらにお書きしてますので、ご参照ください

 

 

精神疾患と心理療法
②原因を探り仮説を立てる(2)

 

今回も引き続き、
前回お書きした抑うつ症状に陥っていると思われる
架空のA子さんの例で彼女のストレスの原因の仮説を立ててみます。






<A子さんにうつ症状をもたらしているストレスの原因(仮説)

・幼い頃の厳しい母親像を取り込んで「優秀でなきゃここに居られない」
 「完璧にできなきゃ、私はダメな姉だ。そうなったら愛されない」
  等といった根底の思考が形成された(中核信念、スキーマ=認知



・「上」の立場に立った事で「優秀(な”姉”)でないとダメだ」という
 思考パターンが益々強くなり、自分のミスを益々許せなくなった



・それ故毎晩自分のミスをチェックし、結果としてよりダメ出しが増えた
 (自己否定思考の反芻)



・また仕事で行き詰っても「甘えちゃいけない、迷惑かけちゃいけない」
 上司や周囲に頼れず、独りで抱え込んでしまい、ストレスが増えた
 (思考→行動)



「もっと完璧に仕事しなきゃ!」益々仕事に没頭する様になり、
 ストレスを緩和する趣味の時間も取らなくなった(行動)



「優秀でなきゃいけないのに優秀じゃない自分」(思考)
 VS「でも、もうこれ以上頑張れない」(思考)葛藤により
 涙が溢れ出て来る(感情)






一旦仮説ができれば(仮説はいつでも修正・追加できる柔軟なものでないと
いけないと思います)、それに基づいて介入(治療)を始めます。

例えば、
上のA子さんの例で言いますと、「否定的な自他に対する思考」(認知)
を変え、頑張り過ぎたり趣味の時間も取らない事、周囲に頼らない事(行動)
を変える、「認知行動療法」がオーソドックスな手法だと思われます。



ただ、
それでも改善しない、或いはドロップアウトしてしまうのであれば
「症状を維持するもの」に焦点を当てて、新たな仮説を考える事も大切
だと思います。

次回は
「症状を維持するもの」について(の仮説)お書きしたいと思います。

 

#私のカウンセリングについての考え方や取り組み方は、
こちらにお書きしてますので、ご参照ください

 

 

精神疾患と心理療法
③症状を維持するもの

 

多くの症例の場合、
「仮説」が的を射ていれば、それに基づいた介入(治療)は功を奏する
と思います。

(例えば、
「認知行動療法」ならば、思考と行動を変える事を目標に働き掛ける、
家族療法、ブリーフセラピー」ならば、コミュニケーションや行動等の
 ”パターン”を変える事を目標に働き掛ける等)



ところが、
中々それがうまく行かない、所謂「難治例」に直面する事もあると思います。



私の考えでは、そういった場合には往々にして「原因」→「結果」
といった直線的な因果律だけではなく、
その症状を維持する事に寄与する因子があるのでは?と推測します。

そしてその症状を維持する因子の一つがトラウマとそれに対する防衛反応
だと想像します。



例えば、
前掲のA子さんのトラウマを探ると、
幼い頃、90点のテストを母親に見せた時に、

「何やってるのよ?!何で100点じゃないの?!」
怖い顔をした母親に金切声で怒られ
片や妹は90点の時でも母親に褒められている光景が蘇ったとします。

その記憶が出て来ると、
今でも恐怖や絶望感を感じ、お腹の辺りが締め付けられるといった反応が出る
とすれば、これはもう立派なトラウマと言えます。

(トラウマになるか否か?は起こった出来事×感受性の鋭さ
 によって人それぞれです)



そして、
こうした出来事によって「妹と違って、ありのままの私では愛されない」
といった恐怖と絶望を感じるでしょう。

そうなると脆弱な幼い自己を守る為に
「愛される為にはお母さんの期待に完璧に応えるしかない」等といった
防衛反応による「スキーマ、中核信念」等の認知(の歪み)が形成される
でしょう。



そしてこのトラウマと防衛反応を伴った「感情・感覚・認知」
普段は無意識下(わかり易く”右脳”としておきます)に格納されています。

そうしてその後の人生において、
「期待に完璧に応えなきゃ嫌われる、自分の価値がなくなっちゃう」
と意識(わかり易く”左脳”側で意識するとします)する場面で、

それが引き金となって、右脳側に格納されていた感情・感覚・認知が
一気にあふれ出しコントロール不全をきたすでしょう。



もしそうだとすれば、いくら左脳側の認知や行動を変えようとしても、
右脳側が氾濫すると手がつけられなくなるでしょう。

そして、その氾濫は引き金が引かれる度に起きるので、
結果として症状はいつまでも消失する事はないのかも知れません。



譬えて言うと、
大雨の時だけ右側の池から左側の池に向かって流れる地下水路が有って、
普段の水位の時に、左側の池を掃除して「きれいになった」と思っていても、
大雨後には右側の池のゴミや汚れが流れ込んで、左側の池はまた汚れてしまう。

「何でだろう」と思いながらまた左側の池だけを掃除しても、
また大雨後には・・・。
という事が繰り返される訳です。

それでは、一体どこまで”原因”を遡れば良いのでしょうか?

次回はそれについてお書きしたいと思います。

 

#私のカウンセリングについての考え方や取り組み方は、
こちらにお書きしてますので、ご参照ください

 

 

精神疾患と心理療法
④原因をどこまで遡ればいいのか?

 

精神疾患や症状、お困り事
「原因と結果」「それを維持するもの」についてお書きしてきましたが、

それでは一体、原因をどこまで遡れば治癒・寛解・解決に導く事ができる
のでしょうか?

私の考えでは、
原因を深堀りすればするほどクライアントさんへの負荷も増える
(特にトラウマに触れると)ので、

なるべく深堀りせずに治癒・寛解、解決へと持ってゆくといった
非侵襲的な方法がベストだと思います。



そういった意味では、
お医者さんの薬剤でよくなるに越した事はないと思いますし、
思考(認知)や行動、コミュニケーションのパターンを変える事
で改善できるのなら、まずそれを目指します。

ところが、

「長年、お医者さんでの服薬治療を受けてるけど、よくならない」
とか

「色々なカウンセリングや心理療法を受けてきたけど、悩みが解消されない」

等と感じておられる方は、
更なる「原因」の追究や、症状を維持するものの特定、トラウマの解消
も必要になってくるかもしれません。

もし、

「薬ではよくならない」
とか

「カウンセリングや心理療法を色々受けてもよくならない」

とお感じの方がいらっしゃれば、お気軽にお問合せ下さい。

 

#私のカウンセリングについての考え方や取り組み方は、
こちらにお書きしてますので、ご参照ください

 

 

プロフィール

のぶさわ 正明
のぶさわ 正明心理カウンセラー・自己実現コーチ
・公認心理師
・全国WEBカウンセリング協会認定
  心理療法カウンセラー
  不登校児対応アドバイザー
・矢野惣一「心の専門家養成講座」卒業
NLP、催眠療法、ゲシュタルト療法、解決志向ブリーフセラピー、フォーカシング、認知行動療法ナラティブセラピー、インナーチャイルド癒し、トラウマ療法、家族療法(システムズアプローチ)等とその統合を習得する(TVの解決ナイナイアンサーでお馴染みの「性格リフォームの匠(達人)」心屋仁乃助さん、「アネゴ系セラピスト」大鶴和江さんは矢野講座の先輩です)
・Gakken「学研の家庭教師」不登校事業室の外部相談カウンセラー
・WEBカウンセリングルーム「みらい」カウンセラー
・日本フォーカシング協会会員
・国際ブリーフセラピー協会(旧:日本ブリーフセラピー協会)会員

2012年2月開業。2025年時点で4,000名超のお客様のご相談をさせて頂きました。