コラム/2023-08-30
シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害の原因
<前回からの続き>
前回お書きした(架空の)例でこの人は、
・人との交流を不快と感じて極端に避けている点(=不快刺激を避ける)
・仕事に没頭する点(=不快刺激を避ける)
・自分の感情や相手の感情を感じない様にしている点(=不快刺激を避ける)
・ペットを可愛がっている点(=動物との交流は快刺激)
といったところから、
不快刺激を極端に避ける(自分なりの快刺激を満たす)傾向が感じられます。
そういった意味では”鈍感”ではなく、本来は”敏感”であると考えられます。
ただ、もしそうだとしても
何故「他人との交流」や「感情の起伏」等を不快刺激と捉えてしまった
のでしょうか?
これも私の想像ですが、恐らくこういった人は、
「自分でコントロールできない事」(=他人、感情等)への
コントロール不全にまつわる不快感に過敏になっていたり、
いつもと違う”差異”(いつもと違う相手の反応や自分の心の動き)
が不快刺激となって、
「回避」という防衛戦略を採り続けているのだと思います。
(ペットや自分独りでの研究は比較的コントロールし易い)
だとすれば、
幼い頃に誰かとの関係の中で、
その人にとってはトラウマチックな出来事があったのかも知れません。
以上の事から、
「シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害の原因」として
私は以下の原因を推測しています。
<私が考えるシゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害の原因>
①刺激に対する敏感さを有している
遺伝的なもの、
或いは父母や養育者等のマルトリートメント(不適切な養育)、
幼い頃のトラウマとなる出来事等によって
先天的、または後天的に敏感である
②コントロール不全に関するトラウマがある
例えば、幼い頃泣き出すと親に”泣くな!”とキレられる、
という事が幾度となく繰り返された(自己感情のコントロール不全)。
或いは、毎夜両親が喧嘩し”やめて!”と間に入っても止められなかった
(他者感情のコントロール不全)。
また或いはクラスの仲良しの子が、突然冷たい態度を採る様になり、
ヨリを戻そうと色々頑張ったが、より冷たくなり、攻撃される様になり、
”裏切られた・・・他人は信用できない”と感じた(他者に対する不信)、
等々。
(他者からの賞賛に対しても他者不信から”それにはきっと裏がある”
と感じるとすれば、受け容れようとしない筈です)
その出来事がトラウマになるか否か?は
恐らくその人の敏感さの度合いによると思います。
つまり同じ出来事でも、敏感さが強ければ強い程トラウマになり易く、
それ程敏感ではない人はトラウマになりにくいと考えます。
③愛着の問題によって、耐性が無い為にトラウマが残り続ける
そうしてできたトラウマが残り続けるか否か?は
耐性の問題が絡んで来ると考えています。
つまり、譬え敏感さが強くてトラウマができ易い人であっても、
愛着形成がなされていて耐性の窓が育っていれば、
トラウマによる反応が長期間持続する事は避けられると思います。
※私は愛着形成が成されなかったのは
一概に親(養育者)だけの責任であるとは考えません。
即ち、子が極端に敏感であれば、愛着形成がより難しくなる、
と考えるからです
④辺縁系側(無意識)の防衛反応が恒常的に持続し続け、
皮質側(意識)と没交渉になっている
上の例の場合は”コントロール不全”といった危機的な状況に備え、
自他の感情や他人との交流といった不快刺激を”回避”し続ける為に
辺縁系側の無意識の防衛反応が常に働き続けている(感情・感覚の抑制、回避)
と考えます。
加えて、
意識(皮質側)と無意識(辺縁系側)の繋がりが遮断され(乖離状態)、
他人との距離感等の感覚や感情が鈍麻され続け(意識側にフィードバック
されない)、社会的交流ができなくなっている状態と言えるでしょう。
それはまるで戦時下で”どこに敵やスパイが潜んでいるかわからない”
といった状況においては、眼をつぶって耳を塞いで五感からの入力を無くして
意識を遮断してしまえば、恐怖を感じなくなり”安全”を感じられるが、
同時に感情も感覚も失い、他人と交流できなくなってしまっている状態
と言えるでしょう。
もしそうだとすれば、
シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害の寛解を目指すには
どういった治療(カウンセリング)が必要なのでしょうか?
そのヒントを次回お書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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