コラム/2015-06-06
うまくいかない人間関係は「愛の偏り」が原因です
矢野惣一先生の新刊「うまくいかない人間関係は”愛の偏り”が原因です」
を拝読させて頂いきました。
今回はそのレビューを弟子としてではなく一心理療法家としての視点で
勝手に(笑)書かせて頂きます。
まず本の冒頭で、娘が不登校に陥ってる家族の架空のケース事例が
逐語で描かれている。
娘、母親、父親に対する的確な介入・・・。
介入自体は、解決志向やMRI等の短期療法・家族療法ではおなじみの方法だ。
つまり、解決志向の「Do something different」(うまくいかないなら
何か違う事をせよ)、「Do more」(うまくいった事があれば、それを続けなさい)
に基づいてるし、
MRIの個人や家族間の問題を維持しているパターンを把握しそれを打ち破り、
問題が生じないパターンに変えて行く為の逆説的介入という戦略的な方法
を採っていると見る事もできる。
これだけだと僕も含め短期療法をメインとしてるセラピストにとっては
格別目新しいものではない。
所が、僕が「これは新しい視点だ!」と感激したのは
愛には「他人を愛したい」と「自分を愛したい」と「愛されたい」の3つの愛
があって、人間関係がうまくいかないのは、それら”3つの愛”のうち、
どれか一つの愛に偏ってしまっているからだ、という視点だ。
今迄の例えば解決志向にすれば「何か違う事をせよ」の具体的な枠組みが
なかったように感じる。
つまり、どういう枠組みで何を基準に「違う事をする」のかが
明確でなかった為に、専門家でも具体的な介入は難しかったはずだ。
またMRIにしても、問題を維持している個人や家族の偽解決努力を調べ、
対処フレーム(枠組み)を見つけ、そのフレームとは逆の介入をする・・・
といった方法なので、普遍的な枠組みが無く、どうしてもクライアント次第の
良く言えばオーダーメード、悪く言えば「場当たり的」なものだったと感じる。
きっちりした枠組みや普遍的な「”メタ”枠組み」が無い為に、
専門家でさえ介入の仕方が難しいのだからそれをクライアント側が
自分で見つけ出すのは至難の業だ。
それが「3つの愛の偏り」という新しい「”メタ”枠組み」が与えられた事で、
専門家は勿論、問題が生じて困っておられる個人・家族にとっても
非常に取り組みやすい方法だと思う。
そういった意味では僕は画期的な本だと思う。
そして、自分でも驚いた事に心理学関係の本を読んで僕は初めて涙した。
矢野心理学の真骨頂とも言える「feel」「do」「be」や
「ごめんなさい」、「有難う」の本当の意味を絡めた家族の再生の物語・・・。
更には、「愛の偏り」を是正する為の具体的な手段。
今迄恐らく世界のどの心理学者も書いた事の無い内容が
一般の人にもわかり易い形で散りばめられている、と感じた。
(※公平な立場で書こうと意気込んだのに何だか本の宣伝みたいになってしまい
”ごめんなさい”(笑))
短期療法をメインとされているカウンセラーさんや対人援助職の皆さんは勿論、
心理士さんや精神科医さん、そして問題が生じて辛い状態になられている
個人やご家族の方にも是非ご一読頂きたいと思います。
コメント