コラム/2021-06-04
境界性パーソナリティー障害~A子さんの例
<前回からの続き>
A子さんの両親はA子さんが幼い頃に離婚し、
A子さんは母親に引き取られました。
母親はA子さんを育てる為に夜のお店で働いており、朝起きられずに
保育園の送り迎えだけしてくれる祖母が置いていったパンとミルクの朝食を
A子さんはいつも独りで摂っていました。
A子さんが小学校に上がった頃には母親は帰って来ない日もでてきて、
不安と寂しさに耐えられなくなったA子さんは
母のお店へ訪ねて行ったこともありました。
(見捨てられ経験・不安)
でも、店に現れたA子さんを見た母親は「何で来たんだよ!早く帰れ!」
と烈火のごとく怒りはじめ、A子さんを追い払いました。
そのうちに母の外泊は増えて、たまに帰って来ても母の機嫌がいい時は
「これで好きなものでも買って」とお金を渡してくれましたが、
(理想の母)
機嫌が悪いと「あ~、お前なんか産むんじゃなかった!」(こき下ろし)
と母親はA子さんに暴力を振るったり、(虐待体験)
「もう死にたい」とか「一緒に死のう」等と言われる事もありました。
その頃の母親には男の人が居たのかも知れません。
そして当時のA子さんも「私のせいでお母さんは苦しんでる」
「良い子でなくてごめんなさい!」という気持ち(=自己否定)
と
「もっといい子にならなきゃお母さんは帰って来ないかも?」
という気持ち(見捨てられ不安)と
「お母さんは怖いけど優しい所もある。お母さんが大好きなのに・・」
という気持ち(理想化)と
「お母さん可哀相!・・・私が助けてあげなきゃ!」
という気持ち(=共依存的な優しさ)が複雑に絡まり合っていました。
やがてA子さんが高校生になった頃には、
母親は男の人と一緒に住んでいた様で、たまに帰って来ると
「あんたまだ生きてたんか?!」等と
等とA子さんを邪魔者扱い(=こき下ろし)したり、
猫なで声で「お前の事は大切に思ってるよ!お母さんピンチやから
バイト代貸してくれへんか?」と言う事もありましたが、
A子さんが「嫌だ!」と言うと「誰のお陰で生きて来れたんや!この恩知らず!」
と母親から暴言・暴力を浴びせられることもありました。(こきおろし)
でも、
この頃のA子さんはそんな母親に反発し
「お前こそ死ね!」(=怒り・こき下ろし)
と反撃をする様になっており、
時に母親の首を絞めたり殴り合いのけんかになる事もありました。
ただ、独りの時にはA子さんはリストカットをしたり、
壁に穴を開けたり、風邪薬を大量に服んだりもする様になっていました。
(=そうするとスカッとするといった快の刺激)
そんなA子さんにも彼氏ができました。
付き合い始めの頃は「大好き!」と彼に気を遣っていましたが(理想化)
段々慣れて来ると、彼氏のLINEの返信が少しでも遅かったり、
「今日は友人と遊ぶ」等とA子さんと会う事よりも、
そちらの方を優先しようとするものなら
「私の事どうでもいいんか?!最低な男やな!」(こき下ろし)
と暴言・暴力を彼に浴びせる様になりました。
でも、彼氏がA子さんが喜ぶ様なプレゼントを渡すと、
A子さんは「大好き!この前はゴメンね!」と腕を組んで甘えてきます。
(理想化)
彼氏は
「一体どっちが本当のお前なんだよ?この前あんなに暴言吐いてたのに・・」
A子さんは
「え?!私カーっとなった時の事は余り覚えてないの」とケロっとしています。(解離)
そんなことが繰り返された挙句、
やがて彼氏は段々A子さんと距離を取ろうとしてきました。
A子さんは「今から死ぬ!」と彼にLINEを入れる事も増え、
(見捨てられ不安からの脅し・試し行動)
彼氏も益々A子さんの事を鬱陶しく思うようになり、
A子さんのLINEをスルーする事も増えたある日、
A子さんは「本当に今から死ぬから・・・」とLINEし、
(見捨てられ不安からの脅し)
手首を切って救急車で運ばれました。
そんな事もあって彼氏とは音信不通になり、
その後A子さんは次々と3人の男性と付き合いましたが、
同じ様なパターンを繰り返し続けました。(衝動性)
次回はこのA子さんを例にして、
前回述べた私の推論である4つのシステムの面から
見てゆきたいと思います。
<次回へ続く>
コメント