コラム/2021-07-05
劣等感とうつ病(劣等感に意識を向けて”うつ”を作り出す)
今回は「劣等感とうつ病」について、
架空のA子さんを例にしてお書きしたいと思います。
A子さんは中学受験をし、
この春から自宅から少し離れた私立中学に通う事になりました。
A子さんは文系科目の勉強がよくでき、
特に歴史については周囲も驚くほどの知識を有していました。
趣味は「漫画を描く事」で、周囲の幼馴染の友人達からも
「上手だね!私にも描いて!」等と認められるほどの腕前だった様です。
家族関係は良好でしたが、
家でも大人しく自室で勉強したり絵を描いたりしている事の多い子供でした。
小学校までは幼馴染と一緒に居る事が多かったのですが、
その中学校には知ってる子はいなかった様です。
入学直後はクラスに馴染めない様子で
母親には「独りでお弁当を食べてる」と言っていて、
毎日疲れ切った様子で帰ってくる事が多く、母親も心配していましたが
「美術部」の部活に入ってようやく気の合う友達ができた様で、
家でも時折笑顔も見られ母親も一安心していました。
そんな或る日、娘が暗い表情で帰ってきた事が気になった母親が
「どうしたの?学校で何かあったの?」と聞いても、
娘は「大丈夫」と答えるだけでした。
それでも母親は辛抱強く聞いていって
「どうも友達と仲違いした様だ」と感じました。
娘の元気のない様子が気になりながらも、
母親は「気にしなくていいよ!頑張って!」
と励ましながら見守る事にしました。
定期テストまでは何とか頑張って学校に行っていたA子さんでしたが、
テストの答案が返って来た日に泣きはらした眼で帰ってきました。
心配した母親が訊ねても、A子さんは「何でもない!」と突っぱね、
すぐに自室にこもってしまいました。
そしてその翌日からA子さんは学校へ行かなくなりました。
母親が辛抱強く聞き出すと、どうも数学や理科のテスト結果が悪くて
「みんなできる子ばっかり!私はできない子だ・・・
お母さんがあの学校行けって言ったからだ!・・・もう死にたい!」
と堰を切った様に泣き始めました。
最近のA子さんは自室に閉じこもる事が多く、ご飯も余り食べず、
昼夜逆転の生活で笑顔も見せる事もなく、
母親が部屋を覗くと何をするでもなく、
思いつめた表情でボーっとベッドに座ってる事が多々ありました。
<考察>
上の「A子さんの例」で、彼女の”うつ”的な状態に至った
心的(脳的)メカニズムを考えますと、
恐らくA子さんは元来
「N」「(ノル)アドレナリンシステム」
(=恐怖・不安・怒り・行動化)」
→「S」「セロトニンシステム」
(=安心・安定・幸せ・満足・繋がり・所属と愛の欲求)
のシステムが優位なタイプでは?と推測されます。
小学校までは学校でも幼馴染に囲まれていたので、
家庭と学校の両方で「S」が満たされていたと考えられます。
ところが知ってる子がいない中学に進学し、
「N」→「S」によって、部活で友人を作れたので一旦システムが安定
しましたが、
その友人と仲違いした為に、「S」が満たされずに、「N」が強く出てきた
と推測されます。
この時にA子さんの持ってる社交性では、
学校では新たに「S」を得る事が困難だと心(脳)が判断したとします。
そんな時にたまたまテストの成績が悪かったので、
劣等感に集中(文系科目の点数は悪くなかたのかも知れませんので)する事
によって「N」システムを起動させ、
家庭にのみ「S」を求め、「N」によって学校に行かない行動を採った
とも考えられます。
また、母親にだけ怒り(=自分へのいきどおり)や苦しみ(=「死にたい)
といった感情をぶつけている事から、母親への依存・執着も感じられます。
勿論、もっと詳しくA子さんや母親からお話を聞いてみないと
A子さんの心理的(脳的)なメカニズムを特定する事はできませんが、
私の推測が当たっているとすれば、
この例のA子さんは、「N」→「S」システム優位型の人が
”うつ”状態になったと言えると思います。
それでは、次回はうつの2種類のタイプについてお書きしたいと思います。
(このタイプ分けはあくまで私の勝手な分類ですのでご了承下さい)
<次回へ続く>
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