コラム/2021-07-14
強迫性障害(OCD)克服のヒント①
<前回からの続き>
前回お書きした様に私の考えでは、OCDの人の特徴として
①易刺激性(感覚過敏)を有している
②こだわりの強さを有している
③「N」→「S」システム優位型でしかも強い「D」システムを有している
の3つが揚げられると思います。
この3つは恐らく生まれつきの資質だと思われますので、
薬物療法にせよ、認知行動療法にせよ、この3つの資質を活かした
(少なくとも抵抗が生じない様な)工夫が必要であると思います。
A薬物療法
OCDの治療の第一選択薬としては、「SSRI」が挙げられます。
これはセロトニンの脳内流量を増やして、
不安・恐怖をもたらすノルアドレナリンを制御しようといった狙いです。
セロトニンが増える事で安心感をもたらす事ができますので、
不安・恐怖を和らげる事が目的の回避行動や強迫行為・儀式が不要
となってゆくという原理です。
確かに理に適っていますし、実際にOCDの人の症状に
ある一定の効果が認められています。
ただ、私が懸念するのは強い「D」システムを有している人にとっては
それだけでは不十分な場合もあるのではないか?という点です。
というのも、
強い「D」システムを有しているOCDの人にとっては、
「自分で決めたルールをやり遂げる達成感」や
(必ずしも不安・恐怖だけではなく)「空虚感」等の低刺激状態を脱する為、
や「至福の時間をより味わう為」等といった”報酬”(=快の刺激)
に症状が結びついている場合もあると考えます。
もしそうだとすれば、
これらの”報酬”は「S」の”安心”だけでは手に入らないと言う事になる
でしょうから、(治療)抵抗が生じる可能性があると思います。
B認知行動療法
偏った自分の考え方や捉え方(認知)を記録したり質問する事で
客観視してゆき、今までの強迫観念や強迫行為への「不合理感」を強め、
その囚われから脱する事を目指す。
また、
曝露反応妨害法(回避行動や強迫行為を我慢して、徐々に減らしてゆく)
によって、行動そのものを変化させてゆく。
これもその効果が証明されている方法ですが、繰り返し述べています様に、
強い「D」システムを有しているOCDの人にとっては
”報酬”が無いと、治療を続けるモチベーションが下がって来る
と思われます。
ですから、
達成が比較的容易な課題から始めて、医師・心理士(師)等の治療者側は、
クライアントさんがそれを達成できる度にコンプリメントする
(褒める=報酬)事が必要になってくると思います。
(=「D」と「S」をもたらす)
加えて、「その症状が無くなったら、何をしたいか?どうなりたいか?」
等といった”報酬”の方向性を変えてゆく必要もあると思います。
それでは次回はOCDで苦しんでおられる方が、
それを克服する為のご自分でできる工夫をお書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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