コラム/2021-12-27
線維筋痛症とトラウマ・PTSD
うちのルームにも、うつ、パニック障害、不安、不眠等と共に
線維筋痛症と思しき症状を訴える方もお越しになります。
この線維筋痛症とは、関節や筋肉、腱など全身の広い範囲に、
3か月以上も激しい痛みやこわばりが続く慢性疼痛の一種で
病院で検査をしても異常が見つからない症状です。
私の印象と、先行研究による様々な知見から、
「線維筋痛症の多くはトラウマや(複雑性)PTSDと関係しているのでは?」
と推測しています。
最近の研究では、
痛み刺激の強さ(身体的ストレス)に反応する脳の領域(痛み関連脳領域)と
嫌な気分(心理的ストレス)に関与する脳領域とはオーバーラップしている
ことがわかってきています。
つまり「身体的な痛み」と「(トラウマやPTSDによる)心の痛み」
を感じる脳の領域が重なっているという事です。
実際、線維筋痛症に苦しむ人の脳画像診断で
①脳の過剰興奮, 痛み刺激に強く反応
②疼痛にかかわる脳領域の萎縮,
③安静時の脳内ネットワークの変化
が報告され、
同様に、線維筋痛症患者の脳内ネットワークの特徴として、
①前帯状回 (ACC), 島皮質 (IC) など情動に関連した領域間の結合が増強し
②ACCと中脳中心灰白質 (PAG), 吻側延髄腹内側部 (RVM) などの
下行性抑制系との結合が減弱していることが報告されています。
すなわち線維筋痛症の方の脳では、
過剰興奮(→痛みを感じる)と抑制系の減弱(→痛みを抑えられない)
という変化が起きているという事です。
更に東京慈恵会医科大学の加藤総夫教授らの研究グループ(2021年)
による最近の研究ででも、
「扁桃体中心核の活動が全身の痛覚過敏をひきおこすことを示した
今回の発見は、心理的・社会的な要因が引き金となって
身体のさまざまな部位に痛みが生じるメカニズムを明らかにした」
とされています。
そしてこの
「身体的な痛みを引き起こす引き金となる心理的・社会的な要因」
というのが、例えばトラウマや(複雑性)PTSDであると私は思います。
それでは、
どうすれば「線維筋痛症」等の慢性疼痛を治す事ができるのでしょうか?
次回はそのヒントをお書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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