コラム/2022-07-11
精神疾患と心理療法①原因と結果
「夜に眠れずに、早朝に目が覚めてしまい、常に気分が沈んでいる・・・
時々ふいに涙が出て来てきてしまうし、
食欲も落ちて仕事に行く事もできず、趣味を楽しむ気持ちにもなれない。
心療内科で”うつ”と診断されて薬を服用してるが、中々良くならない」
上の例で言いますと、
「眠れない」「早朝に目が覚める」
「気分が沈んでいる」「涙が出る」
「食欲が落ちる」「仕事や趣味をする気力が湧かない」
・・・これらは、表面に出ている症状、
つまり何かそうなる原因があっての”結果”だと言えるでしょう。
精神科や心療内科では、その”結果”を引き起こしている
直接的な(科学的に根拠があるとされている)原因に対して薬剤を処方
します。
例えば
・「眠れない」(結果)←「脳の神経が興奮している」(原因)
=「抑制系の神経伝達物質GABAの流量を増やす睡眠(導入)剤を処方する」
・「気分が沈んでいる」「気力が湧かない」(結果)
←「精神を安定させるセロトニンややる気を出すノルアドレナリンの不足」
(原因)
=「セロトニンやノルアドレナリンの濃度を高める抗うつ薬を処方」
等々。
では、
「何故脳の神経が興奮しっ放しになってるのか?」
とか
「何故セロトニンやノルアドレナリンが不足してしまっているのか?」
についての原因には触れないでしょう。
それは何故なら、「科学的には原因はわからない」からです。
脳というものは構造が細かく複雑すぎて、殆どの事がわかっていません。
例えば、腹痛を訴える患者さんに対して、
内科医は問診の後に、エコーやレントゲン、МRI、内視鏡等を駆使して
腹痛の原因を突き止めようとするでしょう。
ところが、
脳に関しては、そういった科学的な検査が今の所不可能に近く
原因を特定できないのが現状です。
譬えて言うと、
100年前の医療技術では腹痛の原因を特定する事ができず
「痛み止め」を処方する事しかできないのと同様だと言えると思います。
(よく、「心療内科へ行っても話を聞いてくれない」と仰る方が
いらっしゃいますが、それは話を聞いても科学的な処置には
余り役に立たないからだと言えます)
ただ、”腹痛”に痛み止めが効けば良いのですが、
効かなかったり、薬が切れると痛みがぶり返す状態が何年も続く様なら
その「痛みの原因」に踏み込まざるを得ないと思います。
そして、
そういった”科学”的にはまだはっきりしていない部分に踏み込んで
仮説を立て、その奥にある原因を想像し、その原因を変える事によって
より根本的な治癒・寛解を目指すのが(少なくとも私の)心理療法
だと思っています。
それでは一体、
心理療法ではどの様に”原因”を類推し探ってゆくのでしょうか?
その辺りを次回お書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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