コラム/2022-07-13
精神疾患と心理療法②原因を探り仮説を立てる(1)
<前回からの続き>
前回、
「精神疾患による症状や困り事に対して、
科学的にはまだはっきりしていない部分に踏み込んで仮説を立て、
その奥にある原因を想像し、その原因を変える事によって
より根本的な治癒・寛解を目指すのが(少なくとも私の)
心理療法である」
と述べました。
今回は、
(私の)心理療法における仮説の立て方、原因の探り方の一例
をお書きしたいと思います。
例えば、
「今年の春くらいから仕事中にふいに涙が出てきて、仕事のミスも増え、
上司に注意される事も増え、朝起きると体が動かなくて
会社へ行けない日も出てきた」
といった架空のA子さんの例。
恐らく、
抑うつ症状と考えられるので、セロトニンが不足していると考えられます。
→セロトニンの不足は(原因は多岐に渡りますが)この場合は、
ストレスホルモンであるコルチゾールの増加によると仮定します。
→もしそうだとすれば、A子さんにとってのストレスは何か?を探ります。
→お話をお伺いした所、
・真面目で優秀な仕事ぶりを認められて、この春から部門の責任者になった
・「私はダメな人間だ・・・だから頑張らないと認められない」
という自己認識がある
・それ故、他人の評価を素直に受けとめられない
・仕事で行き詰った時でも、上司や周りに頼る事ができない
・毎晩、今日の仕事のミスやダメだったところを反省している
(責任者になってより反省の時間が増えた)
・家に帰ってからも、休日も仕事の事で頭が一杯で、
好きだった趣味も控えて仕事の準備や勉強に時間を費やしている
(責任者になってから、より仕事オンリーになった)
・教育熱心で厳しい母親の元で育った長女で、優秀な妹と比べられ、
劣等感を持っている
という事がわかりました。
それでは次回は
これらの材料を基にA子さんのストレスの原因の仮説を立てみましょう。
<次回へ続く>
コメント