コラム/2022-08-22
他人を殺して死刑になりたいと思う人の心理
先日も東京で、少女が「人を殺して死刑になりたかった」という理由で
面識のない母娘を路上で刺すといった痛ましい事件がありました。
こういった心理状態は”異常”とされ、中々理解し難いと思われますが、
その様な心理状態に陥る原因を私なりに想像してみました。
※詳しい事は加害者本人に聞かない限りはわかりませんので、
あくまで想像ですし、
そういった心理状態の人全てに当てはまる訳ではないと思います。
※どんな理由があろうとも、どんな心理状態だろうとも、
犯罪を擁護するつもりはありませんし罪は許されない事だと思っています。
被害に遭われた方の一日でも早い心身のご回復をお祈り致します。
<他人を殺して死刑になりたいと思う人の心理>
①感覚過敏を有しており、それ故にとても傷つき易い
器質因(先天的)、或いは環境因(後天的)によって、
特に脅威・恐怖等の不快刺激に対する過敏さを持っている。
それ故、たとえば親が忙しくてかまってくれないとか、
自分が思う通りの愛し方を親がしてくれない等と感じたり、
友達が自分に冷たいと感じたり、「自分は愛されていると感じてないのに
あの娘は親に愛されて幸せそうに見える・・・私への当てつけ?」等と
怒りを感じてしまったり・・・そうして過敏さ故に深く傷ついてゆく。
※この快・不快刺激への過敏さは、あくまで”自分にとっての”もので、
他人の快・不快に対しては敏感では無いと想像されます。
②対象への集中が強く、意味づけを強化し続ける
例えば、「私は愛されない」とか「大切にされていない」
等といった心の傷への集中力がとても強いと
「ママは妹には笑顔で接してるのに、私には気難しい顔を見せる」
といったほんの些細な事でも過敏に反応し、(もしかしたらママは
私と接したあの時は、持病の片頭痛に襲われてたのかも?等とは考えずに)
それを「私を大切にしていない証拠」としてその意味づけを強化してゆく
でしょう。
そしてその意味づけが強化されれば、その対象への集中力も益々強くなり、
おまけに「皆が私を大切にしない」等と拡がってゆくでしょう。
例えば車のクラクションの音を聞いただけでも
「私の事を邪魔だと思ってるんだ!」等と、被害妄想レベルまで行っちゃう
事もあり得るでしょう。
③愛着形成が成されていない
幼少期に養育者等との間で愛着形成が成されていないと
「心の安全基地」を持つ事ができません。
そうなると、常に自分が疎外されたり攻撃されて守ってくれる人、
助けてくれる存在が居ない、といったまるで戦場に孤立無援の状態
で放り出された様な日常世界を生きる事になるでしょう。
それ故「自分一人ではどうする事もできない」という無力感に
さいなまれるでしょう。
※愛着形成の不全は、必ずしも親や養育者に問題があるとは限りません。
親が精一杯愛情を注いだつもりでも、子供本人の思い通りの愛情でないと
受け容れられず、愛着が形成しにくくなる事もあると考えられるからです。
④脅威・不快に対する「闘争」「逃走」反応が同時に働き、
且つ、「闘争」反応が勝っている
戦場に放り込まれ孤立無援になったら、当然「戦う」か「逃げる」か
の防衛反応が生じるでしょう。
そして逃げ場が無いと感じた時の「逃走」反応が「自死」に繋がる
と思います。
その中でも特に、
「他人を殺して死刑になる」といった思考に陥ってしまう人は
戦場で追い詰められて最後の最後まで敵と戦ってやっつけようとしますが、
絶望の苦しみから最後は「死」に逃げるしかないと思ってしまうのでしょう。
※特に虐待的な環境に育った場合やいじめ等でトラウマを抱えてしまった場合は
引き金が引かれると闘争反応が強く出る場合も多いと思います。
※この加害者の少女にとっての母親は、「憎しみの対象」であると同時に
「愛着の対象」でもあったとすれば、「憎しみの対象」をやっつけたいが、
やっつけてしまったら、愛着の対象をも失ってしまうので、
生きていられなくなるのかもしれません。
⑤依存傾向又は自己愛傾向が強い
愛着が形成されてない為に、自分一人ではこの苦しみに満ちた戦場から
抜け出せないと感じてるので、必然、依存的になるでしょう。
そして、
「死」という自分を守る為の逃走反応をも「自死」という形ではなく
「誰か私を殺して!」「死刑にして!」といった依存的なものになる
のでしょう。
※この事件の加害者の少女は恐らく自己愛傾向が強く、他人を殺める事
への恐怖・躊躇は少なく、自分を殺める事ができないとすれば、
自己愛傾向、自己保存欲求が強いと思われます。
つまり、こういった事をしてしまう人が自死する人と違うのは
「闘争反応が強い」事と「依存傾向や自己愛傾向が強い」といった特徴があると思います。
もしそうだとすれば、ご自身やご家族の中で、
「犯人と同じような思考を持っていて何とかしたい」
とお感じになっている方は早急にカウンセリングを受けられる事
をお勧めします。
この様なケースでのカウンセリングの具体的な方法は割愛しますが、
方向性としては、
A:(上記「①」「②」に関しては)認知・思考を変え、白黒思考から離れ、
偏った思考への集中や意味づけを弱化してゆく
B:(上記「③」「④」に関しては)愛着の再形成を行い、
自分の中に安全基地を作る、
加えて、
もしその過度の防衛反応がトラウマから引き起こされているのであれば、
並行的にトラウマ処理を行ってゆく
C:それを通じて得た新しい認知・思考・感情を基に、
新しい反応パターン・行動が板について般化される様に導いてゆく、
という事になります。
※「⑤」の依存性については、上の「A」~「C」が成されれば、
自ずと弱化されると思われます
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