コラム/2023-04-19
統合失調症⑰寛解に向けて~心理療法(2)
<前回からの続き>
統合失調症の方への心理療法は、
まず前回お書きした様に薬物療法等によって、
双方向の「対話」が可能になった状態である事が条件だと思います。
そしてその「対話」が少しでも可能であれば、お手伝いができると思います。
今回からは、私の考える”仮説”に基づいての心理療法について
お書きしてゆきたいと思います。
<統合失調症の方への心理療法①>
①前頭葉の機能を回復させる
私の”仮説”が少しでも正しければ、生命の危機を感知した生体のシステムは
三層構造の脳の最下(深)層である脳幹が、その危機的状況を救う為に、
最上(表)層である大脳皮質(や中間層の辺縁系)をコントロールしている状態
が統合失調症ではないか?と考えられます。
もしそうであるならこれは言わば「ボトムアップ状態」と言えるでしょう。
一方、
統合失調症をはじめ、メンタル疾患と言われる状態にはない人は
日常生活の多くの場面(特に実行機能が必要とされる場面)では、
大脳皮質がイニシアチブを採る「トップダウン状態」にあると言えます。
だとすれば、再度大脳皮質(特に前頭葉)がイニシアチブを採る
「トップダウン状態」に徐々に戻してゆく必要があると思います。
(1)傾聴
譬え、幻覚や妄想だとしても否定せずに、
その方の今の苦しみ・お悩みに共感してゆく。
(2)双方向の対話
可能であれば、過去の思い出話等、双方向の対話に持ってゆく。
(対話をする時には大脳皮質や辺縁系が活動しますので、
その活性化を狙います)
(3)心理教育
”声”や”考え”は悪夢と同じで、脳幹からの刺激で、
大脳皮質が勝手に反応していると説明する
(4)幻覚や妄想等の外在化
「その”声”の主に名前を付けるとすれば何て呼ぶとぴったりですか?」
等と外在化し、前頭葉の自我意識と幻覚・妄想とを徐々に切り離してゆく。
(5)マインドフルに客観視できる状態を強化してゆく
例:「あなたに”お前は周りの人から狙われてるぞ”と言ってきてる
”声の主”は確か”恐怖の大王”だと仰っていましたね!
そいつが今度は何を言ってきてます?」
「今度カウンセリングを受ける迄の間に”恐怖の大王”が言ってきた事を
できるだけ書き出し、それに対して”あなた”はどう思って、
どんな気持ちになったか?も書き加えて持って来てもらえませんか?」
「これからは声が聞こえたり、ある考えが浮かんで来たら、
その度に”今、〇〇が△△と言ってきてる”
とか、
”今□□が××という考えを吹き込んできてる”
等と頭の隅っこで思って下さい」等々。
(5)認知療法
”声”や”妄想”を客観視でき、自分から切り離す事ができれば、
それらが伝えて来てる内容を書き出して、
それを「裏付ける証拠(事実)」
と
「そうじゃないのでは?の証拠(事実)」
をそれぞれ書き出して見比べる。
そして声や妄想が伝えてきている内容を信じる度合いが少しでも減れば、
その内容に”突っ込み”を入れる。
例「インターネットを介して、私の考えてる事がみんなに知れ渡ってしまう」
⇒「またまた~、そんな事が可能なら戦争や犯罪なんて起きないだろうし、
ノーベル賞もんやで」等々。
※この部分は上記「(5)」までができる様になってからです
次回は統合失調症の方への心理療法②として、
「大脳資質と辺縁系の機能と連携の強化」についてお書きします。
<次回へ続く>
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