コラム/2024-01-08
学校へ行けない人へ④不安過敏(1)予期不安
<前々回からの続き>
今回からは、
”不安過敏”とも言うべき
「不安」(確定していない未来に起きるであろう、ネガティブな結末
を想像した時に生じる不快感情)に対する過敏さを持っている為に
学校へ行けなくなっているお子さんの中で、
「予期不安/恐怖」が強いと思しきお子さんの例と解決へのヒント
をお書きしてゆきたいと思います。
<学校へ行けなくなったお子さんの例④不安過敏(1)予期不安型>
◎Y子さんの例(予期不安型)
「中学2年生のY子さんは、大人しく生真面目な性格で、
長女として弟妹の面倒を見たり、シングルマザーの母親に気を遣って
家事全般を手伝う様な優しい一面も持っていました。
学校では美術部に属していて、
彼女が描いた絵がコンクールで賞を取ったり、才能豊かな面も評価され、
3年生が引退後は部長を任される様になりました。
ただ、彼女は人前で発表したり本を朗読したりするのが苦手で、
丁度半年くらい前のホームルームの時間に、
担任に”Y子さんの意見はどう?”と、意見を求められたのですが、
突然の事に彼女は頭が真っ白になり、黙り込んでしまいました。
そんな彼女をクラスの男子たちが”Y子、顔が真っ赤だぞ!
日本語がわからないのか?!”等とはやし立てました。
その時からY子さんは、”また先生に当てられたらどうしよう?”
とか
”顔が赤くなったり声が震えているのに気づかれたらどうしよう?”
等と、
授業中やホームルームの時間は常にこういった予期不安にさいなまれ
続けました。
そしてこの前の授業での発表の時に、
同じように言葉に詰まって赤面した彼女をクラスの何人かがはやし立て、
同じ部活の女子もクスクス笑っている事に気が付きました。
その時から学校へ行くのが恐怖になり、徐々に行けなくなってしまいました。
心配した母親が訊ねても、母親に心配かけまいとする彼女は
”大丈夫、ただ身体が動かないの・・・低血圧だと思うから心配しないでね”
等と、答えるばかりでした。
ただ彼女の内面では”どうしよう・・・高校出たら早く働いて
お母さんを助けようと思ってたのに、このまま学校に行けなかったら
進学もできないし、お母さんの負担になってしまう・・・。
こんな厄介者の私なんて居ない方がいいんだろうなあ。”
そう考えると涙が次から次へと溢れて止まらなくなりました。」
<解説>
上の例では、状況からY子さんは
①不快刺激に極めて敏感である
誰しも、突然当てられるとドキッとする(不快)でしょうし、
うまく答えられない/話せないのは恥ずかしい(不快)でしょう。
更に、誰かにからかわれたり、笑われたりといった
否定される事は嫌な事(不快)だと思います。
ところがY子さんの場合は、そういった不快刺激に対して極めて敏感な為に、
それから生じる不快感情がトラウマレベルになってしまっている、
と考えられます。
②豊かな想像力を持っている
Y子さんの場合は、
”また笑われたらどうしよう?・・・そうなったら、学校へ行けない”
とか
”このまま学校へ行けなくなったらどうしよう?・・・・そうなったら
お母さんに迷惑を掛けてしまう・・・そうなったら
ここには居られない”
等と、豊かな想像力を駆使して、
次から次へと先の事を想像する能力に長けている、と感じます。
(だから絵も上手いのかも知れませんが)
但しこの場合は、その豊かな想像力がアダとなってしまい、
不安が現実味を帯びた具体的な恐怖へと形作られ、
トラウマがより強く形成されてしまう、と考えられます。
③防衛反応によって意識が自分に集中し続ける
更なるトラウマを避ける為に、自己防衛的になるのは当然だと思います。
ですから彼女の場合は、''二度と傷つけられない様に、''
”真っ白になってしまう自分”や”赤面してしまう自分”、
”学校に行けてない自分”を責めて、
意識では”私が真っ白にならない様に”とか”私が赤面しない様に”
とか”私が笑われない様に”とか”私が学校に行ける様に”
等と、
常に欠点とみなした自分の部分を”そんな事になったら許さないからね!”
と監視し続けている訳です。
これは言わば”意識的な防衛反応”と言えると思います。
ところが一方では、
無意識的な防衛反応は、更なるトラウマを避ける為に
”学校に行かせない”といった回避する戦略を採っている訳です。
そうなると、
意識と無意識の葛藤が生じ、
「学校に行かなきゃいけないのに、行けない自分」に
自我が無力感を感じ、自信を失い益々防衛的になってゆくでしょう。
※これと似た、様々な社交/社会不安や
排尿恐怖(学校等のトイレで他人が居ると小用を足せなくなる)
等は別の機会にお書きしたいと思います
もし、これらの私の推察が正しければ、
Y子さんの様なお子さんやその親御さんはどうすれば良いのでしょうか?
次回は、私が考えるその解決へのヒントをお書きしたいと思います。
<次回へ続く>
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